私自身は単語集を使い大幅に語彙を増やし、生徒たちにもこの方法を用い、継続的に良い結果を得ているので、単語集によるボキャビルは決して無理・無意味でないどころか効果的だと経験則的に言うことができます。ただし、当サイトのボキャビルの項で述べているように、単語集によるシステマティックなボキャビルを行うには、全般的な基礎力と4000~5000の基礎語彙を持っていることが前提となります。これ以前のレベルの学習者が単語集でボキャビルを行うのは私も無理だと思います。
5000語レベルを越えた、出現頻度の低い単語を覚えるためにはいくつの方法があります。特に意識的なボキャビルを行わず多読により語彙増強を図るのは、もっとも自然で理想的な方法です。ただ、一定の語彙を獲得するのに長い期間を要します。5000語程度の基礎語彙を持つ人が、多読によって自然に1万語を越える語彙を獲得するには数年が必要でしょう。
単語集を使うボキャビルだとその期間を大幅に縮めることができます。私自身は、どうしてもすぐに原書や英文雑誌などを読みたかったため、数年を待つわけには行かず、単語集で短期間に8000語ほど語彙を増しました。おかげで、3ヵ月ほどで英文を読んだときの感覚が激変しました。
ただし、単語集によるボキャビルは人工的な作業であることは否めません。こうして覚えた単語は単に意味と品詞を覚えたに過ぎません。ちょうど人の名前と顔を覚えただけのようなものです。人の本当の人柄や性好がわかるには、より深い付き合いをしなければならないように、単語の使用法、含意などがわかるためには、ボキャビルを終えた後、覚えた単語群と付き合い定着させていくことが必要です。私の場合、ボキャビルを終えた直後から、ペーパーバックの多読を開始・継続したので、新たに覚えた単語の定着・理解の深化が非常にうまくいきました。
逆に、いくらボキャビルで単語を覚えても、多読などの定着作業を行わなければ、ほどなくそれらの単語は忘れてしまいます。単語集によるボキャビルが、無意味であるとか効果が無いとか言われる際は、このようなアフターフォローのない一過性の自己目的化したボキャビルを指しているのではないでしょうか?
この方法は市販の単語集を使う方法と比べると、テキストを読み解き、単語リストを作成する手間・時間が掛かりますが、自ら主体的に拾い上げた単語を扱うことになるので、ボキャビルの作業自体は非常にスムーズで快適です。また、リストを作らず、ボキャビルも行わないで、多読の中でまったく自然に単語を覚えていくスタイルより、はるかに速く語彙増強をすることができます。こうした点から、私の教室では、英語習得に対するモチベーションが高く、英語の学習にある程度の時間・労力を注ぐ準備のある生徒にはこの方法を薦めています。
もう一つの方法は、出来合いの単語集を使わず、多読・精読をする中で遭遇する未知単語を抽出し、単語リストを作成して、ボキャビルを行うことです。私はフランス語のボキャビルにこの方法を用いています。メジャーな外国語とはいえ、英語と比べるとマーケットがはるかに小さいため、基本単語以上を収めた効果的な単語集がないためこの方法に頼らざるを得ないのです。
以上のような方法から、ご自分の英語学習に対するモチベーション・可処分時間・学習プランなどに合わせて選択・融合して実行されたらいかがでしょうか?