リスニング 音読パッケージ 精読 多読(速読) 語彙増強=ボキャビル

英語トレーニング法

多読(速読)

❶ 多読(速読)への誘い

英文解釈はできるが速読できない

好きな英語作家の本を、原書ですらすら楽しんで読む。これは、私が英語学習を始めた最大の目的の一つでした。当時の私と同じ夢を共有する人は多いでしょう。お気に入りの作家の、お気に入りの作品を、長椅子にもたれながら、あるいはベッドに寝転がって翻訳を介さず原書で楽しむ。読書好きにはまさに悦楽です。

大学受験を終えた私は、さあ、好きなものを好きなように読むぞと、早速挑戦してみました。形だけはイメージどおりベッドに寝転んで。まず、ネィティブ用の一般のペーパーバックは語彙力不足で轟沈。分らない単語群がラインダンスを踊っている状態でした。「基礎単語でどんな英文もその90パーセントが構成される、ゆえに細部を除きほとんど理解できる」というどこかで聞いたご託宣はなんだったんだ。しかし、まあこんなものかなと、あまりショックはありませんでした。受験英語のレベルと本当の英語力の間にはそれなりの距離があるものだと達観していたのかもしれません。数日おいて、今度は単語のレベルが英語学習者用に制限された簡単な読み物に切り替えてみました。「江戸の敵を長崎で討つ」という感じでしょうか。

ところが、結果は芳しくありませんでした。知らない単語はほとんどないものの、すらすら読むという状態からは程遠かったのです。大学受験時代、私の得意科目は英語で、特に読解力は最も自信を持つ部分でした。今から振り返っても精読の仕方をしっかりと身につけ、正確な、良い読みだったと思います。実際、私は大学受験以降、独立した精読のトレーニングを一切やっていません。

しかし、私の読解はいわゆる英文解釈一辺倒で、正確だが、舐めるようにゆっくりと読むというスタイルでした。短い英文を、時間をかけて分析的に読むことはできるのですが、英文の流れに乗る術は知らなかったのです。そもそも、一ページめくるとまた英語、次も英語、英語だけが延々と続いていく一冊の本を読み上げるなどということは受験勉強では経験していませんでした。英文解釈と、快刀乱麻を断つごとく英語の本を読みこなすというのは、次元の異なることなのだと思い知ったものです。まったく、基本動作を覚えただけでいきなりリングに上げられたボクシング練習生の心境でした。

この後、奮起してトレーニングを始め、また読書に関しては好きこそものの上手なれということもあり、数年後には英語の本、雑誌を楽しんで読むという夢は叶うのですが、最初は何事もほろ苦い思いを味わうものです。


高度な英語力を支えるのは大量の読み

日本人は自分たちの読解能力に関して、勘違いをしているようで、よく「読むことはできるのだが、会話はどうも」という英語力に関する自己申告を耳にします。しかし、これは現実を正確に表していない、縮尺の狂った比較論でしょう。実際には、「会話は手も足も出ないけれど、非常に簡単な英文ならおぼろに意味がわかる」というのが正確だと思います。私の例でもわかるように、一般的に日本人の読解能力が瞬間的にもっとも高くなる大学受験期でさえ、本当の読みには遠く及ばない状態なのですから。

読めないことに嫌気がさして英語を読むことを敬遠したり、あげく「英語を読むなんて意味ないよ。英語ができるっていうのは話せるということだよ」と英会話一辺倒になるのは賢明ではないでしょう。少なくとも、ブロークン英語で満足するのではなく、きちんと英語を身につけたいならば。なぜなら、高い英語力の背景には必ず大量の読みがあるからです。例えば、英語のプロ中のプロである同時通訳者は、その完璧なリスニング能力と見事なスピーキング能力ばかりが強調されますが、その裏で膨大な量の英語を日常的に読んでいるのです。プロの同時通訳の中で、英字新聞が読みこなせない人や、生涯に英語の本を一冊も読んだことのない人など一人もいないでしょう。

同時通訳のレベルまで至らなくても、ある程度高度なレベルの英語力を身につけるためには英語を大量に読まないわけにはいけません。時々、発音など技術的な面では申し分ないのに英語力があるところで止まってしまう人がいますが、たいてい読むことが嫌いで、英文の読みの量が少ないものです。そもそも、母国語の日本語の駆使能力でさえ、読書量の多い人とそうでない人との間には差があるものです。そこそこの英語力で満足したくなければ、活字嫌いを返上してどんどん英語を読んでみましょう。


どのように多読(速読)に入っていくか?

意気高く多読(速読)の海原に船出して、私の経験のようにいきなり座礁した人も多いでしょう。主な原因は次の3つです。

  1. まだ基礎的な構文・文法・基礎語彙などが身についておらず、早かろうと遅かろうと英文を正確に読むことができない。
  2. ゆっくりと正確に読むことはできるが、大量の英語を流れに乗りスピーディーに読めない。
  3. 語彙不足。知らない単語が多すぎて読めない。

まず、1. の基礎力不足ですが、これは単純に多読(速読)に乗り出すには時期尚早ということです。もう少し、英語力がつくまで、速読(多読)を始めるのは待ちましょう。他の基礎トレーニングでまず体力をつけることです。読みは精読だけに絞ってください。多読(速読)を開始する時期はTOEICで500~600くらいになってからがいいでしょう。

基礎力を蓄えた学習者にとって、2. の速読能力の欠如と3. の単語不足の2つが多読を妨げる要因として残ります。速読能力をつけるためにはどんどん英語を読むのが特効薬ですが、語彙力がなく読めない。ボキャビル(語彙増強)に精を出しながら、読みは精読だけに専念し、多読を開始するのは十分な語彙力を持つまで引き延ばすべきでしょうか?

ネイティブ・スピーカー用に書かれた、一般の英字新聞、雑誌、本などをいちいち辞書を引くこと無しに読むには、少なめにみて1万語を越える語彙が必要です。私の例のように(ボキャビルの項参照)一挙に語彙力を上げるやりかたもありますが、通常の段階的なボキャビルでこの語彙力をつけるには、数年かかります。英語を学ぶ上で、速読から吸収することは計り知れないほど多いのです。この間、多読(速読)を行わないのは、学習上の損失が大きすぎます。また、速読をするためには語彙力だけでは十分ではありません。英文の流れに乗っていく能力が必要です。十分な語彙力がついてから多読(速読)を始めるのでは、英文解釈的なスローな読みから、「波乗り速読」への体質改善にまた時間を要してしまいます。

私が薦めるのは、語彙などに制限のある学習者用の読み物などで、英文の流れに乗る体質をつけてしまい、並行してボキャビルも行い、十分な語彙力を持つに至ったら、ネイティブ・スピーカー向きの一般の読み物に移行していくことです。こうすれば、語彙が限られている期間でも速読体質を身につけられ、さらに多読による多くの副次的な効果を得ることができます。また、ボキャビルで十分な語彙力をつけた時点で、すでに文の流れに乗る体質ができているので、英文解釈から速読への体質改善期間を経ず、スムーズに語彙制限などのない一般の英文の多読へと移っていくことができます。

語彙制限などのある簡単な読み物を読むのは、制限のない英文を読むための言わば「プレ多読(前段階多読、準多読)」ともいえますが、効果はなかなかのものです。実際のところTOEIC600前後でこの「プレ多読」を開始する私の生徒のほとんどは、それだけでTOEIC800台に入っていくし、860以上のいわゆるAランクに到達する人もいます。

❷ プレ多読の実践

どんな風に読めばいいのか

プレ多読とは、外国語として英語を学ぶ学習者用に使用単語数を限定したり、単純な文に書き換えた読み物を数多く読んでいくことです。プレ多読は、このような制限のない原書やネイティブスピーカー向けの新聞・雑誌などを読むようになるための助走的な段階ですが、この段階中に英語を読む上での本質的な要素をあらかた吸収することができます。もっとも重要なことは、英文の流れに乗って、スピーディーに読んで行くということです。いわゆる速読能力です。

速読能力を身につけるためには次のようなスタイルで気楽に読んでください。

1.完璧な分析、理解を求めず、6割以上わかれば良しとしてスピーディーに読む。

英文解釈のように正確に読み解く必要はありません。ややこしい構文などは大まかにストーリー、話の流れがつかめれば十分です。わからない単語に関してもそれほど潔癖になる必要はありません。話のキーになる単語以外は極力辞書を引かず、前後関係で推測するか、飛ばしてしまっても構いません。

2.知っている話や、予備知識があるなどわかりやすいものを読む。

あらかじめ大筋を知っている話や、自分がある程度知っていることは理解しやすく、読みのスピードが増します。よく知られている童話や有名な人物の伝記などがその例です。

3.自分にとって、面白い、興味の持てるものを読む。飽きたら途中でやめる。

とにかく、面白く楽しく読めるものを選んでください。飽きたら、途中で投げ出して結構。うんざりしながら、100ページの本を数ヶ月抱え込むより、2、30ページで放り出しながら、一ヶ月で数冊に手をつけたほうが、読みの量は増えます。

大切なことは、1語でも多くの英語を読むことです。こんな風にしばらく続けていると、あら不思議、いつの間にかあなたは英語の波に乗っています。


どんなものを読む?

プレ多読に適した教材にはこと欠きません。次のようなものを読むといいでしょう。

1.語彙制限本

英語学習者向きに、有名な小説、童話、伝記などを、限られた語彙で、簡単に書き直したもので、プレ多読の代表的素材です。洋販出版のladderシリーズ、PENGUIN READERS、HEINEMANN ELTなどは大きめの書店で簡単に手に入ります。

2.対訳本

英語の原作の隣ページに対訳がある本で、語彙制限など特にありません。私は、小林秀雄が、翻訳を一節読んでから原書の対応する部分を読む方法を薦めたというのを加藤周一氏の著作経由で知りました。早速、原作と翻訳が一冊にまとまっている対訳本で始めてみました。当時は南雲堂の対訳シリーズくらいしかありませんでしたが、アルバイト代をつぎ込んで4、50冊読みました。現在ではさまざまな対訳本が出版されています。変り種では漫画の対訳本もあります。

3.学習・受験用長文テキスト

高校のサブ・リーダー、高校入試用長文、大学受験用のごく基本レベルの長文、英検2~3級の長文などがあります。学習教材だからといって英文解釈的な読みではなく、大まかにスピーディーに読んでください。

4.英字新聞のウィークリー版

学習者用に、難しい単語句の説明や、解説のついたものがあります。週間STなどが代表格です。

❸ プレ多読が終わったら

英文読書の大海原へ

プレ速読の段階は延々と続くわけではありません。ある程度集中すれば、1年足らずで終わってしまうでしょう。それで、英文の流れに乗る体質は出来上がってしまいます。後はボキャビルなどで語彙が増すのを待つのみです。徐々に語彙力が増すに連れ、一般の英語の本や、雑誌でも読めるものが増えていくでしょう。そして気がつくと、あなたは狭い入り江を抜け、大海原へと船出しています。この段階に至った人に、あれこれと指示もありません。「何を読めばいいのか?」などという質問は、「どんな女性(男性と)と付き合えばいいのですか?」「どんな趣味をもてばいいでしょうか?」と聞くのと同じくらいナンセンスです。気の向くまま、好きなものを好きなように読んでいってください。多読にはトレーニング的な窮屈さはありません。それなのに、読めば読むほど英語力は深まっていきます。また、精読の効果と相俟って、精読と多読が融合した、正確かつスピーディーないわば「精速読」ができるようになる段階がいずれ来ます。英語を読むことはこよなく甘美な営みです。特に従う必要もありませんが、先に英文読書の海に漕ぎ出した船乗りとして、アドバイスめいたことをいくつか申し上げましょう。


ペーパーバック

ペーパーバックは軽いので、ベッドに寝転んで読むのにうってつけです。ベッドはいつも官能の宿るところ。もっとも、私がここで言っているのは、物語と言葉が与えてくれる光悦のことですけど。私は、読書の楽しみを覚えた6歳の頃から、本を読むのは寝転がってと決まっていました。始めて読んだペーペーバックはブラッドベリの the October Country でした。陶然としました。次が映画「思い出の夏」の原作 the Summer of '42 これはあまり面白くありませんでした。映画の方がよかったですね。ジェニファー・オニール、きれいだったなあ。あとはモーム、ロアルド・ダール、テネシー・ウィリアムズ、ポルノ小説と、日本語でと同じく、脈絡のないまったくの乱読。23才から28歳までに100冊前後読んだのでしょうか?

十分な力があるのに、何百ページもあるペーパーバックは、自分には読めないものと思い込んでいる人がいます。無用の謙虚さは捨てて、まずは一冊目に取り掛かってみましょう。難しいのは話の流れを掴むまで。後は、物語の面白さが引っぱっていってくれます。一冊目を読み終えた感慨は忘れがたいものとなるでしょう。3、4冊も読むとペーパーバックを読むペースがすっかり身についています。おまけに読解力も格段に上がっていることを保証します。TOEICや英検の読解パートの点を上げるために、いつまでも問題集を解いている人がいますが、つまらないことはおやめなさいといいたくなります。そうした目的のためでも、カリカリと問題を解くより、ペーパーバックを一冊寝転がって読むほうがよほど収穫があるでしょう。

アイルランド時代はダブリンの古本屋で3冊1ポンドなどという値段で買えるので、週に最低一冊のペースで読んでいました。英米文学のスター作家に、無名の三文ハードボイルド小説(意外に拾い物が多かったですけど)、果ては、「ポジティブ思考ですべて好転する」みたいな怪しげな啓発書に至るまで、乱読、淫読。そう、ナボコフやカポーティーなどがほんとに楽しんで読めるようになったのはこの時期でした。感激しました。3年で読んだペーパーバックは200冊以上。帰国する際に全部古本屋に売り払い、帰国前夜一泊したベッド・アンド・ブレックファストの宿代に消えました。

帰国してからはペーパーバックの読書量はずいぶん落ちてしまいました。ここ10年で、4、50冊くらいでしょうか。生徒に薦められて、2003年の新年に読んだディーン・クンツ。なかなか手に汗握りました。でも、3冊も読むと設定・展開に慣れちゃいますね。別の生徒に薦められたスティーブン・キングの the Green Mile は、中盤まではジャンルを越えた傑作だと思いました。この生徒は出版されているハリー・ポッターを全部読んでいるのですが、私は一巻だけで途中下車。魔法使いの話ならメアリー・ポピンズの方が好きです。ディズニー映画で知られた、アメリカナイズの生クリームにまみれていない、原作のメアリーはとても魅力的です。

ここのところペースダウンしていますが、ペーパーバックはすでに私の終生の友になっています。いつか私が独居老人になる時が来たら、孤独と無聊を慰めてくれることでしょう。


英文雑誌、特に Newsweek と TIME

英文雑誌を読むのもよく薦められる方法です。いきいきとした、現在進行形の英語にふんだんに触れる最適の方法です。私も20代前半にさまざまな雑誌を読み始めました。リーダーズ・ダイジェスト、プレイボーイ、リング(ボクシング専門誌です)、ニューズウィーク、タイム。どれも楽しく読みました。

英語学習でよく取り上げられるのは、「リーダーズ・ダイジェスト」、「ニューズウィーク」、「タイム」です。いろいろな意見があるようです。

「ニューズウィーク」「タイム」は高級誌であるのみならず、現代英語の最高峰である。両誌の英文は英米の教養有る層がモデルとするものであり、高い山ではあるが英語を真摯に学ぶものはいずれこの両誌を読みこなせる域を目指すべきである。文体、語彙、レトリック、文化的背景など得られる恩恵ははかりしれない。

という絶賛型や

「タイム」「ニューズウィーク」は英語を母語とする人の中でも、インテリ層が読む雑誌であり、英語を母語にしない学習者にとって難解に過ぎる。聖書の引用なども多く、文化・歴史的背景の違う日本人にとってはさらに障害が増す。読めもしない「タイム」を小脇にはさんで歩くようなスノビズムを捨て、文体的にずっと平易な「リーダーズ・ダイジェスト」などを着実に読み続けるほうが、英語学習上の効果ははるかに高い。

などの現実路線型などです。

どちらも、正論なのですが、何を読むかを決めるのは、あなた自身です。大切なことは、自分自身にとって面白いのは何か、相性が合うのは何かです。私自身は、一番相性が良かったのは「ニューズウィーク」です。確かに、語彙や文体は「リーダーズ・ダイジェスト」のほうが易しいのですが、興味、記事のスタイルなどから「ニューズウィーク」のほうが楽しめたのです。

定期購読すると非常に安くなるので、私は24歳の時に、雑誌は「ニューズウィーク」一本に絞り、毎週届くこの雑誌を規則的に読み始めました。一応のボキャビルは終えていましたが、「ニューズウィーク」の英文はさすがに手強く、当初は、次の号が届くまでにカバー・ストーリーを含む15、6ページしか読めませんでした。しかし、慣れというのはすごいもので、程なく、次の号が届くまできっちりすべて読み終えられるようになっていました。また、私にとって「ニューズウィーク」の購読はトレーニングの一環でもありましたから、広告なども含め、カバー・トゥ・カバーで全ページもれなく読んでいました。28歳頃に、英語から一切離れてしまうのですが、そのときまでに3~4日で読みきれるようになっていました。

アイルランドに渡ってから、再び「ニューズウィーク」を毎週読むことを再開しました。彼の地では郵便による定期購読ではなく、職場に向かう道すがら、途中のニューズ・スタンドで買っていました。仕事、プライベート共に日常的に英語を使う環境の中、並行して続けていたペーパーバックの乱読の効果も相俟って、アイルランド滞在2年を迎えた頃には、数時間で、「ニューズウィーク」を読みきってしまうようになっていました。すると、チェーン・スモーカーが感じる口寂しさのように、物足りなさが募り、アイルランド滞在最後の1年弱は、加えて「タイム」も毎週読むようになりました。

当時の両誌の読み方はこんな具合でした。週末の休み、土曜日の昼近くに起きだすと、コーヒーを飲みながら買っておいた「ニューズウィーク」を読み始め、途中昼食の用意などで中断した後、再び「ニューズウィーク」を取り上げ読み始める。気が向けば近くの喫茶店に足を運んで、そこで読むこともありました。夕食の時間が来る頃には読了。月曜に仕事に出かける際、「タイム」を買い、仕事の合間にオフィスで読んだり、昼食の後、老舗の喫茶店ビューリーズで読んだり。夏場の気候のいい時は、ダブリン市民憩いの公園、セント・スティーブンズ・グリーンに出向き、芝生に寝転んで読むこともしばしば。時々目を上げると目に入る、愛らしいアイルランド娘たちの、蜂蜜色の背中はいい目の保養でした。週の前半にはタイムも読了。

私が「ニューズウィーク」を読むのは、楽しく、面白いからでした。そうでなければ、捕らわれることなく投げ捨てて、他のものを読んでいたでしょう。でも、学習効果を知りたい実際家の方々のためにささやかな情報を供することに吝かではありません。「タイム」「ニューズ」ウィークを100冊もカバー・トゥ・カバーで読めば、日本で施行されているあらゆる英語関連試験の読解問題は、非常に簡単に感じるでしょう。

❹ 上達過程における適用

多読を開始するのは、基礎力がつき、ゆっくりでも正確な読み(精読)が可能になってからがいいでしょう。

TOEIC500~600くらい。もっともリーディング・セクションのスコアが低すぎないこと(250点は欲しいです)。 いきなり一般の本、雑誌を読むのは語彙力の点から厳しいでしょうから、学習者用に語彙制限の有る本などで、英文の流れに乗る体質を作るためのプレ多読をします。ただ、一定分量(ラダーシリーズ、ハイネマンなどを3、40冊くらい)のプレ多読を消化した段階で、他のトレーニングの効果と相俟って、かなりの力がつきます(TOEIC700台後半から800台半ばくらい)。

その後はただ興趣にまかせて読むだけです。英文多読は英語との縁が続く限り永遠に続きます。日本語で、本や雑誌、新聞などを一生読みつづけるように。ただ、もうトレーニングという感覚はなくなります。

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