音読パッケージ 瞬間英作文 精読 多読 文法

英語トレーニング法

短文暗唱=瞬間英作文

❶ 短文暗唱=瞬間英作文とは

音読パッケージと2本柱

音読パッケージとともに英語の内在化トレーニングの2本柱を成すトレーニングです。音読パッケージが英語を受け入れる体質を作ると共に、英語のストックの裾野を広げる役割を果たすのに対し、短文暗唱=瞬間英作文は、英文を即座に作るための瞬間英作文回路を自分の中に組み込みます。また、この回路に乗せて、音読パッケージなどで蓄えた英語のストックが実際に使えるようになります。最も目立った効果は英語が話せるようになるということですが、それ以外にもリスニング、読解力も向上します。自在に使える構文、フレーズが多いということは、英語力全体を底上げしてくれるのです。


「力があるのに話せない」を打開する

短文暗唱=瞬間英作文は、その他の点では有効な学習を行っている人でも、見落としがちな、あるいは敬遠しがちなトレーニング法です。非常に単純な英文を無数に作るという手法が知的にチャレンジングな事を好む学習者の死角に入りやすいからです。

高い基底能力を持ちTOEFLでも600点前後(TOEIC900前後)をとって留学をした人たちからよく次のような体験談を聞きます。「現地に行って、読むことは問題ないし、リスニングもでき講義も理解できた。でも、話す方はうまくいかず、最初の半年は聴くだけ、半年くらい過ぎてから、簡単なセンテンスがとつとつと口から出始め、1年2年と経つうちにスムーズさが増し、長いセンテンスでも話せるようになった。」

ある意味では、これは自然な外国語習得のプロセスです。確かに大学の学部4年間の留学というように滞在期間が長い場合は悠然と構えていられます。しかし、大半の人にとって、語学留学を思い立っても、数ヶ月から長くても1年の滞在がせいぜいでしょう。1年程度ではようやく会話が成り立ち始めた頃に帰国ということになってしまいます。

短文暗唱=瞬間英作文トレーニングを十分に積めば、苦も無く英文が口をついて出るようになりますから、文字通り現地に着いたその日から英語を話すことができます。あとはどんどん話すことにより、会話力のブラッシュ・アップをするのみです。

実は私自身もこのトレーニングの有効性を見過ごし、かなり高い基底能力を持ちながらも英語が話せないという期間を長く過ごしてしまいました。このトレーニングは効くだろうな、と思いつつ簡単な短文を無数に作るという退屈そうな作業に取り掛かる気になれなかったのです。しかし一向に英語が口から出てくるようにならない情況の中、中学英語レベルの短文集を使ってこのトレーニングを開始したのです。渋々と重い腰を上げたものの、いったん始めてみると作業はなかなか快適で、その効果は劇的な形で現れました。

中学レベルの英語が応用自在になるのに半年もかからなかったと思います。欠けていたジグゾー・パズルのピースが見つかり、空白部分にぴたっとはまった思いがしたものです。気を良くした私は徐々に教材のレベルをあげていき、1年程度で、音読などで消化済みの構文・文法は自由に使えるようになっていました。

短文暗唱・瞬間英作文は、英語力の他の側面にも効果を持ちますが、このように英語を話すということには決定的な役割を果たします。海外に行く前に会話力をつけておきたいという方は、多少の単調さにめげずしっかりとトレーニングしてみてください。効果ありまっせ!

❷ トレーニング上の重要ポイント

短文暗唱=瞬間英作文トレーニングを行う際は次の3つのポイントに留意してください。

  1. 簡単な文を数多く作る
  2. スピード、滑らかさを重視する
  3. 暗記しようとしない

ひとつひとつ解説しましょう。まず、1.からです。

英語の学習に英作文を取り入れる際、使える英語を効率的に身につけるためには、決していきなり次のような和文英訳問題に取り掛からないことです。

問題.次の日本文を英訳せよ。
「日本人は礼儀正しい国民であるとする評価があるが、私は無条件にこの意見に与することはできない。なるほど、われわれは欧米的な基準から見れば、他者に対し、慇懃な、時としては卑屈といってよいほどの態度で接する傾向がある。しかし、世界に冠たる丁重さが発揮されるのは、往々にして、近所付き合い、職場、同業界といった、構成員が互いに強い利害関係をもつ共同体内部に限られるのである。」

こういった文が満載された大学受験や英検用英作文問題集をお持ちの方がいたら、すぐさま押入れの奥深くしまってください。なぜならこの種の問題が要求しているのは、知っている英語のルールを瞬間的に使うことでなく、その彼方にある翻訳の能力だからです。翻訳とは、深い日本語の知識を持ち、英語の能力も既に非常に高いレベルにある人が行う専門性の高い仕事であり、英語の基礎を身につけようとしている段階で手をつけることではありません。

我々がまず身につけなければならないのは、平易な文を瞬間的にかつ正確に作ることの出きる能力です。そもそも上に挙げた問題は日本文でさえ、すらっと口から出て来るしろものではないでしょう。こういった文から、あやふやな構文をこね回し、和英辞典と首っ引きで長時間かけてつぎはぎ細工のような英文をつくっても労して功無しです。効果をあげるには簡単な文を素早く、ひとつでも多く口から発していくことが大切です。

次に2.についてです。このトレーニングの主要な目的は、言いたいことが瞬時にばね仕掛けのように口から出てくる回路の獲得です。そのためには短文を暗唱するとき、スピーディー、かつなめらかになるまで口に収めなければなりません。適切なテキストを使いながら、十分な効果があがらない人はこの部分を飛ばして、英文が取り合えずできたところで満足してさっさと次の文に移ってしまっているのです。また、瞬間性も忘れないで下さい。このトレーニングで使う短文は自分にとっては簡単に理解できるレベルのものです。一つの日本文を英語にするのに1分も2分も時間を掛けるべきではありません。これでは数多く文をつくるというポイント1.が守れません。ちょっと考えてわからなかったら答えの英文を見てよく理解し、繰り返し口にして下さい。

最後に3.です。外国語の駆使能力を身につけようとする場合、意識的なゴリゴリ暗記は禁物です。なにごとも一回で強引に暗記しようとしないことです。こうした記憶はいわゆる短期記憶、中期記憶で、学校のテストでは有効であったかもしれませんが、外国語を自由に操る力をつけるためにはほとんど役に立ちません。

なぜなら、外国語を駆使するための基盤としての文法、構文、語彙は永久に忘れず、瞬時にアクセスできる長期記憶としてストックされなければならないからです。この長期記憶はごりごりした暗記ではなく、自分の名前、家族や友人の顔、学校や仕事場への道順の記憶などと同じように、繰り返しによる刷り込みの結果起こるのです。

❸ 短文暗唱=瞬間英作文のステージ進行

短文暗唱=瞬間英作文は3つのステージに分かれ、ステージごとにテーマ、使用する教材のレベルも異なります。

第1ステージ=瞬間英作文回路の設置準備

このステージの目的は、中学英語の範囲内の英作文が確実かつスムーズにできる回路の設置です。教材集としては中学英語の構文・文法項目別の例文集などを用います。重要なことは単語、表現などに難しいものが一切無い、ばからしいほどかんたんなテキストを使うということです。こういったテキストの短文は、極めて容易かつ無機的なものです。例えば、「不定詞の副詞的用法の目的」の項では、

  • 私は本を借りるために図書館に行きました。
  • 太郎は友達に会うために公園に行きました。
  • 彼女はその列車に乗るために走りましたか?

といった文が並んでいます。多くの人は、いい大人がこんな文をぶつぶつやってられるかと、もっと実際的な表現や気の利いた言い回しがたっぷり入った文例集を使おうとします。そうした本では、用いられる文は、例えば「その新婚夫婦は婚姻届を提出しに区役所に行った。」であったりします。すると、「新婚夫婦」とは英語でなんと言うのか?「婚姻届」は?「提出する」は?「区役所」は?と表現に迷い英文がすぐに作れないということが起こります。構文自体は簡単なので、答えの英文を見れば納得は行きますが、暗唱する段になると新しい表現がたくさん入っているので口に落ち着けるのに時間がかかってしまいます。また、記憶の負担もかかり、瞬間英作文というよりフレーズの暗記になってしまいやすいのです。これでは、英作文回路を作るというトレーニングの目的自体がどこかに行ってしまいます。

まずは基礎固めです。ピアノを習い始めたばかりの人がショパンのバラードの楽譜を買っても弾けるはずがありません。そのレベルに達する前に、バイエルやハノンで運指の基礎練習をする過程が必要でしょう。英語も同じです。まず、頭の中であれこれ考えなくとも基本的な文が組み立てられる回路を作ってしまいましょう。そのためには知らない語彙語彙・表現を含まない単純な文で始めるのがいいのです。英文を組み立てること以外の一切の抵抗をトレーニングから取り除くことができるからです。

実際的な表現や気の利いた文句を好きなだけ覚える場は第3ステージに用意されています。第1ステージでは簡単な文をしかも文法項目別でひたすら作っていきます。いわば、本格的なウェートトレーニングの前に非常に軽い負荷を使ってバーベルを扱う正しいフォームを覚えるようなものです。

とはいっても、実際にやってみるとこういったトレーニングを今までやってこなかった人は第1ステージでさえ最初は苦労するでしょう。じっくり考えればどうということのない文でさえ反射的に英文にしようとすると間違いが続出したり、口に落ち着かなかったりします。これが、「知っていること」と「できること」のギャップです。でも落胆することはありません。規則的なトレーニングを行えば基礎回路は遠からず設置されます。第1ステージと第3ステージの距離も、バイエルとショパンの間のそれに比較すればはるかに小さいものです。


第2ステージ=瞬間英作文回路の設置完了

第1ステージでは中学英語の英作文が文法項目別にスムーズにできることが目標だった。この第2ステージでも文法・構文的には引き続き中学英語の枠の中でトレーニングしますが、瞬間性、機動性、応用性を高めることをテーマにします。

第1ステージではテキストの1ページの短文全てが「不定詞の名詞的方法」ならそれだけというように一つの文法項目だけを使って練習を行います。この第2ステージでは文法項目別編集のテキストから離れ、文法・構文要素がランダムに使われた教材を使用します。つまり、現在形を使った文の後に過去形や現在完了形が出てきたり、不定詞を使用した文の次に関係代名詞や受動態の文が現れるといったものです。トランプを切った=シャフルしたようなので、こういった教材をシャフル教材と呼んでいます。問題は、短文集は文法・構文的に編集されているものが一般的でシャフル教材が少ないということです。しかし本来短文集や英作文問題集でないものを効果的に使うことができます。

まず、中学英語の教科書ガイドがあります。ガイドの訳文から逆に本文を再生(英文再生)するのです。教科書の英文はまとまりのある会話や会話や物語の形を取っているので、1セクションの英文が全て同じ文法・構文で書かれているということはありません。必然的に文法・構文シャフルが行われることになります。欠点はかなり高価(2,000円前後)なことです。

そこで、同じトレーニングをもっと安上がりに、さらにハイレベルで行えるのが高校入試用長文問題集です。教科書ガイドと同じく訳文から問題の英文を再生します。読んでしまえば簡単ですが、立て板に水のごとく英語にしていくのはかなりいいトレーニングになります。私自身この「高校入試英語長文再生」でかなり英会話力がつきました。大枚はたいて英会話学校に行って、"yeah" "really"などと相づちばかり打っているよりはるかに効果があることを保証します。ただ、気をつけることは公立高校入試用の問題集を使うことです。私立校入試用の問題集は、しばしば中学英語を越えた内容を含んでいるからです。

短文暗唱=瞬間英作文の第2ステージの仕上げは、中学英語の要素が一文の中に複数含まれた英作文を行います。例えば次に挙げるような文です。

  1. 私が昨夜観た映画は、インドで作られた。
  2. 私が子供の頃住んでいた町には、公園がたくさんあった。
  3. 彼女がなぜ怒っているのかわからなかったので、私は黙っていた。
  4. 君がどちらの車のほうがより良いのか言ってくれなかったので、僕は気に入った方を買った。
  5. 窓を割ってしまったその少年は、お父さんに叱られるだろうか?

解答例

  1. The movie (which/that) I saw yesterday was made in India.
  2. There were many parks in the town where I lived when I was a child.
  3. As I did not know why she was angry, I kept silent.
  4. Since you did not tell me which car was better, I bought the one (which/that) I liked better.
  5. Will the boy who has broken the window be scolded by his father?

 

  1. 関係代名詞の目的格と受動態の連結を過去形で。関係代名詞節が主部に来る文を日本人は苦手にしがちです。
  2. There is(are) の構文と関係副詞との連結。
  3. 間接疑問文と一般動詞のSVCの文が使われています。
  4. 間接疑問文と関係代名詞そして、比較が盛り込まれています。
  5. 関係代名詞節の主部、受動態の連結。beを忘れないように。

どうでしょうか?中学程度とは言え、瞬間的に行うにはかなり負荷の大きい英作文ではないでしょうか?かなりややこしい、実際の会話では複数の文に分けた方がいいような文も含まれていますが、言おうとすれば簡単に言えるという基礎力は欲しいものです。

残念ながらこういった文が練習できる短文集や英作文問題集はほとんど市販されていません。ただ、この複雑な連結英作文は、項目別教材、シャフル教材できちんと基本ができるなら必ずしも必要ありません。自然と応用性は身につくからです。上に示した短文は、項目別やシャフルなら大丈夫なのに連結させると途端に構文がぐしゃぐしゃになってしまう生徒のために私が開発した特別教材です。

第2ステージまでは構文・文法的に中学英語程度にしぼってありますが、実は基礎回路としては十分なものです。ここまでくれば、いいたいことを知っている範囲の英語にすることは造作も無くなっています。後はこのこの瞬間英作文回路を使って、快適に無数の文を作り回路そのものをさらに強化、拡大しながら、表現の幅を広げていくだけです。


第3ステージ=瞬間英作文回路の深化・拡大

短文暗唱=瞬間英作文の最終段階。
このステージでは、中学英語という枠を取り払い、第2ステージまでで完成した回路をフルに活用し、あらゆる構文、表現を吸収していきます。書店に行けば、この第3ステージのトレーニングにうってつけのテキストがいくらでも見つけられます。第1ステージでは、回路の設置に集中するために、難しい表現や気の利いた表現の含んだテキストの使用に待ったをかけましたが、第3ステージでは思う存分こうした表現を覚えてください。第2ステージ完了時に、既に強固な瞬間英作文回路ができあがっていますから、どんな表現がでてきても口に収まらなかったり、持て余したりすることはないのです。こうした表現を身につけていくことが第3ステージの大事な目的でもあります。したがって、第2ステージまでと違い、第3ステージには終了ということがありません。英語の表現を覚えることに終わりは無いからです。たとえば、通訳など英語のプロは常に英語の表現力を研ぎ澄ませていなければなりませんから、この種類のトレーニングは欠かせないでしょう。ただ、そこまで高度な英語表現力を求められない一般的な使用が目的の人は、徐々にこのトレーニングの量を減らしていくことになるし、あるレベルになればまったくやらなくてもよいでしょう。あとは実際に英語を使うことによって表現力を維持、上積みしていけばよいのです。いずれにしても、第3ステージでは、瞬間英作文回路の強化から、表現の拡大ということに、トレーニングの比重は徐々に移っていきます。

難構文も楽々吸収
第3ステージで是非マスターしておきたいものに、大学受験用構文集があります。そう聞いただけで顔をしかめる人がいるかもしれません。受験時代の忌まわしい記憶が蘇ってくるのでしょう。「あんな複雑な構文は受験に必要だっただけだ!」とか「実際の会話で使うはずが無い!」といった声が聞こえて来そうです。ところがどうして、会話でも結構使われます。

例えば、先日もアメリカ映画をみていたら、難構文の代表格である、いわゆる「鯨の構文」がさらっと会話で使われていました。この構文はno more ~than・・・という枠組みを使うもので、A whale is no more a fish than a horse is.「馬が魚でないのと同じように鯨も魚ではない。」と言う例文をよく使うのでこの名があるのですが、大学受験生がもっとも苦手にする構文の一つです。「この構文は非常に形式的なもので堅い文章の中のみで使われます。」などと解説する先生もいるのですが、私が見た映画の中では、女子高校生同士の会話で使われていました。同い年の友人に子供っぽいと言われた女の子が、I am no more a child than you are! 「あんたが子供じゃないならあたしだって子供じゃないわ!」とやり返していました。

こうした構文が主に書き言葉で使われ、会話ではほとんど中学英語レベルの構文が使われるのは事実です。とくに自分が話す際には、中学レベルの構文が自在に使えるなら、ほとんど支障が無いでしょう。しかし、堅いものの言い方をする人はいますし、演説などを聴くこともあるでしょう。そして何よりも、あらゆるレベルの英文を読むには、あらゆる構文を知っておくことが必要です。

実は、中学英語の回路が完成した後では、大学受験レベルの構文を身につけてしまうことは、さしたることではないのです。私自身の経験をお話しましょう。私は中学レベルの瞬間英作文回路を作った後、ほとんど努力らしい努力もせずに大学受験用構文を身につけました。

当時私は友人の経営する小さな予備校で、大学受験生たちに英語を教えていました。授業で構文を教えるために市販の構文集を使っていたのですが、授業の前に控え室でこの構文集をぱらぱらとめくっていたのです。私は英語のトレーニングをする時にはしっかりと声を出すのですが、この時は授業のための軽い準備に過ぎず、自分の学習をしているつもりもありませんでしたから、せいぜいぶつぶつ呟く程度です。

自分が大学の受験勉強をしている時は、構文を取り立てて覚えたことも無くその知識も不十分だったのですが、中学英語が完全に身についた後あらためて大学受験構文を学習してみると、その構造が実に良くわかるのです。一見複雑な構文も簡単な文に僅かな上乗せをしているだけなのです。例えば、先ほどの鯨の構文なども、「なんだ。受験時代にはよくわかんなかったけど、A whale is a fish. A horse is a fish.という中1英語にno more ~than・・・というフレームをかぶせてあるだけじゃん。」と、手品の仕掛けが透けて見えるように、構文の成り立ちがわかるのです。

そんなことを数ヶ月続けているうちに、そのテキストの構文をすべてマスターしていました。よく理解できるというのにとどまらず、どの構文を使ってでも瞬間的に英作文ができるようになっていたのです。大学受験用構文は私の英語学習のうちでももっとも少ない労力で身についたものです。この経験から、私は大学受験レベルの構文を難しく感じ、覚えられないのは、単にそれ以前の中学レベルの英語が未消化だからだということができます。


短文暗唱=瞬間英作文トレーニングのステージ進行まとめ表

第1ステージ

中学英語の範囲内で平易な文が文型別に確実にスムーズに作れるようにする。
単語・表現に難しいものが一切無いばからしい程容易な文例集を使用。


●使用教材例

中学生用文型練習教材
高校入試用構文集
「中学英語で24時間話せる」Part1.2.(市橋敬三著・南雲堂)
「イチからはじめる英作文」(東後幸生著・ベレ出版).etc.

第2ステージ

中学英語の文型の瞬間的な引き出し、結合が自由にできるようにする。
反射的に英文を作る回路の設置完了。
例文が、文法・文型別に並んでいないパターンシャフルされたもの、あるいは文型が結合された文例集を使用。


●使用教材例

「愉しみながらの英作文」(米沢頼子著・明日香出版社)
「もっともっと愉しみながらの英作文」(米沢頼子著・明日香出版社)
「やっぱり英作文」(岩切良信著・ベレ出版)
中学教科書ガイド(英文再生用)
高校入試用長文問題集(英文再生用)etc.

第3ステージ

さまざまな文型・構文・表現を駆使できるようにする。
第2ステージ終了までに獲得した回路を利用し、中学英語の枠を越えたさまざまな文例集・構文集を用い、あらゆる構文、文型、表現を習得していく。


●使用教材例

「話すための英文法」(市橋敬三著・研究社)
「英語が話せる魔法の英文法」シリーズ(全5巻)(市橋敬三著・南雲堂)
「松本亨英作全集」(英友社)
「英語表現辞典」(朝日出版社)
大学入試用構文集etc.

❹ 短文暗唱=瞬間英作文の実際の手順

短文暗唱=瞬間英作文トレーニングの実際の手順ですが、どのステージでも基本的には同じです。ここでは、第1ステージで使用する文法項目別に編集された中学2年の短文集をテキストに使います。このテキストの目次を見てみましょう。

1.

過去形

代表文:

I visited the library yesterday.

2.

過去進行形

代表文:

She was taking a bath then.

3.

That節

代表文:

I think that he is a nice man.

4.

when節

代表文:

When I came home, my brother was watching TV.

5.

SVC(一般動詞)

代表文:

The girl looks sad.

6.

SVO+前置詞

代表文:

I gave the book to the student.

7.

SVOO

代表文:

I gave him a book.

8.

Will単純未来

代表文:

He will soon be back.

9.

Will意志未来

代表文:

I will go to the country some day.

10.

Will・shall

代表文:

Will you please call him? / Shall I help you?

11.

Be going to

代表文:

I am going to see him tomorrow.

12.

May・must

代表文:

You may go now. / You must do your homework.

13.

Have to

代表文:

They have to clean their rooms.

14.

Be able to

代表文:

I was able to solve the problem.

15.

感嘆文

代表文:

How kind he is! / What a kind boy he is!

16.

不定詞・名詞的用法

代表文:

I want to study English.

17.

不定詞・副詞的用法

代表文:

He went to the library to borrow some books.

18.

不定詞・形容詞的用法

代表文:

I have some work to do this afternoon.

19.

動名詞

代表文:

He enjoys listening to music.

20.

原級

代表文:

She is as pretty as her sister.

21.

比較級・er

代表文:

He is taller than his father.

22.

最上級・est

代表文:

He is taller than his father.

23.

比較級・more

代表文:

Tom is more intelligent than Jim.

24.

最上級・most

代表文:

She is the most beautiful woman in town.

25.

比較級・副詞

代表文:

He runs faster than you.

26.

最上級・副詞

代表文:

She sings (the) best of all the girls.

27.

現在完了・継続

代表文:

He has lived in Japan for three years.

28.

現在完了・完了

代表文:

The boy has broken the window.

29.

現在完了・経験

代表文:

He has once been to Europe.

30.

受身

代表文:

Emily is loved by her parents.

項目ごとの短文の数は10なので、この本全体の単文数は300です。苦手にする人が多い最後の項目の「受身」を使ってトレーニングの手順を紹介します。この項目には次のような日本語文とそれに対応する英文が並んでいます。

日本文

1.

エミリーは両親に愛されている。

2.

この小説は多くの人に読まれている。

3.

この手紙イギリスにいるおじによって書かれた。

4.

英語は多くの国で話される。

5.

このおもちゃは中国で作られた。

6.

その少年は級友達に笑われた。

7.

その窓は誰によって割られたのか?

8.

彼は交通事故で死んだ。

9.

あなたはみんなに人に好かれるだろう。

10.

彼女はいつ、どこで生まれたのか?

英文

1.

Emily is loved by her parents.

2.

This novel is read by many people.

3.

This letter was sent by my uncle in England.

4.

English is spoken in many countries.

5.

This toy was made in China.

6.

The boy was laughed at by his classmates.

7.

Who(m) was the window broken by?

8.

He was killed in a car accident.

9.

You will be liked by everybody.

10.

When and where was she born?

さて、トレーニングに入りましょう。


サイクルを回す

学習の中でもトレーニング性の高いものは必ず同一のテキストを何度か繰り返します。これを、サイクルを回すと言います。文法であれ、構文であれ、語彙であれ、英語を駆使するためには瞬間的に記憶から取り出し(アクセスして)、自由に使いこなせることが必要です。

このような反射的で融通性に富んだ知識は、試験勉強のような一回限りのゴリゴリした暗記では獲得することができません。

大切なことは軽めに何度も繰り返すということです。これを行うことによって、知識が深く確実に刷り込まれ、使いこなすことのできる技術(スキル)に変化するのです。


セグメントに分ける

何度も繰り返すことによって内容を刷り込んでいくのですが、いっぺんにテキスト全体を学習すると、1サイクル終えてテキストのトップに戻ってきた時に記憶が薄れていて、せっかく得たスピードと滑らかさが失われているということが起こります。ですから、ひとつのテキストをいくつかの部分(セグメント)に分割します。

セグメントごとにサイクルを回して完成させ、最後にテキスト全体のサイクル回しをすると能率的です。

大切なことは軽めに何度も繰り返すということです。これを行うことによって、知識が深く確実に刷り込まれ、使いこなすことのできる技術(スキル)に変化するのです。


第1サイクル

それでは、最初のサイクルです。はじめてこのテキストにあたるわけですから、このサイクルではじっくりと4つのステップを踏みます。

1.まず、日本語文の内容を理解して英作文をします。
ここで気をつけるのは無駄に時間を費やさないと言うことです。決して一つの文に1分も2分も長考しないで下さい。短文暗唱=瞬間英作文は言語的な反射神経を鍛えるトレーニングなのです。1文につき長くても10~20秒で切り上げて下さい。

2.次に文ごとに英文を見て答えあわせをして理解納得してください。
正しい英文を作ることができましたか?4.や5.で、by many countries、by Chinaとしなかったでしょうか?「多くの国」や「中国」は動作の主体ではないので機械的にbyを持ってこないように。6.で「笑われた」とwas laughed byとatを落としませんでしたか?「~を笑う」はlaugh atですから、このatが受身になっても行方不明にならないようにして下さい。

7.で詰まる人が多いです。より基本的な一般疑問文は「その窓はピーターに割られたのですか?」を作ってみましょう。これはWas the window broken by Peter? ですね。7.では「ピーターに」が「誰に」なので代わりにwhomが入ります。疑問詞は文頭に来ますから、
Whom(who) was the window broken by?となります。whomの代わりにwhoを使うほうがより口語的です。

8.ではby a car accidentではなくin a car accident ですね。9.ではbeを落とさないように。どうでしょうか?中学2年の英語と言えども基本がぐらぐらしていると、思わず足をすくわれた個所もあってのではないでしょうか?上に挙げたようなポイントに気をつけながら自作の英文と、解答を見比べしっかり理解・納得してください。そして次に、

3.英文を口に落ち着ける作業をします。
理解・納得した英文を、テキストを見ながら何度か音読して下さい。口になじんだら、テキストから目を離し数回唱えます。テキストを見ながらの音読も、テキストから目を離した暗唱も、単なる音にならないように文構造・意味をしっかり感じ、発話実感を込めて英文を再生.hutoji_redして下さい。

例えば7.の文なら、粉々になった窓ガラスを思い浮かべながら、「いったい誰がこんなことをしたんだ?!」と憤慨を込めて言うのです。ばらばらの文を、リアルな感情とともに再生するのは難しいと思われるかもしれませんが、すぐに慣れてしまいます。外国語の習得には多少の芝居っ気が必要です。

テキストから目を離し、スムーズに2~3回言えれば次の文に移って下さい。反復回数は当然ながら文の難度によって変化します。「この花は美しい。」This flower is beautiful.程度の文なら、スムーズに言えるならば、テキストを見て一回、目を離して一回の、合計2回でもいいでしょう。しかし、「あなたが庭で見つけた花はいい香りがしましたか?Did the flower you found in the garden smell good? だと構文的にぐっと難しくなるので、口に落ち着けるためにはそれなりの回数を繰り返さなければならないでしょう。いずれにしても、音読パッケージのように数十回も繰り返す必要はありません。

学校英語・受験英語では英語を静止的な知識として扱いますから、理解できたらお終いで、この繰り返しの作業がないがしろにされています。英語を使いこなすことがゴールでないので無理からぬことです。何を目的にするかによってトレーニングの方法は全く異なってきます。「わかっていること」を「できること」にするためにはわかりきったことを繰り返すことが欠かせません。

1~3の作業は個々の文について連続して行います。このように10まで終わったら、

4.10文全部の「英作文の流し」を行います。「英作文の流し」とは、各項目の仕上げとして10の英文を川が流れるように、なめらかに連続的に再生していくことです。日本文を見ながら、1~3のステップで口に落ち着かせた英文が口からすらすらとでるように状態にして下さい。

途中でつまづいて流れを止める文があれば、その文については3.のステップに戻り再び口に落ち着けます。このようにして流れを堰きとめる個所を復習しながら10文すべて終わったら、一文目に戻り同じ要領で「英作文の流し」を行います。このようにすると苦手な文は当然繰り返しの回数が増えますから自然に弱点を補強することになります。

「英作文の流し」を何度か繰り返してすべての文が発話実感を伴ってすらすらといえるようになったらその項目は終わりです。次の項目に移って1~4のステップを繰り返していきます。このようにして、セグメント全体を終えたら第2サイクルに移ります。


第2サイクル以降

第2サイクルから後はすべて同じで、第1サイクルのステップ4.の「英作文の流し」だけを行います。もちろん流れをせきとめる英文はステップ3.に戻り口に落ち着ける作業をしながらです。とはいっても、第1サイクルで4つのステップを踏み、特にステップ3.でしっかり口に落ち着けているうえ短いセグメントに切るので、トレーニングは順調に進むでしょう。

サイクルトレーニングの特長は、サイクル数が増すにつれトレーニングの負荷が減っていくということです。何度も繰り返す、と聞いただけでうんざりとした顔をする人がいますが、実際にはトレーニングはどんどん容易にかつ快適になっていくのです。第1サイクルでは比較的入念なステップを踏みますが、その際の理解・記憶とセグメント分割を利用してそれ以降のサイクルはとんとん拍子にスピードアップしていきます。この第1サイクルでさえ、一回で覚えきろうなどという邪念はありませんので、負荷はゴリゴリ暗記の10分の1以下でしょう。

サイクルを回していると、5~6回目からスムーズに短文が口から出てくるようになりますが、ここですぐにサイクル回しを止めないで下さい。たやすくできることを楽に繰り返すことにより「熟成」が起こり、深い刷り込みが起こるのです。けんかをする場合、相手が降参したらそこで攻撃を止めるのがルールでしょう。しかし、英語のトレーニングでは、相手が無抵抗になっているときにさらに馬乗りになって殴りつけてとどめをさすことが肝心です。淡白にトレーニングを切り上げ捕まえたはずの獲物を取り逃がさないで下さい。サイクルは楽になってからさらに4~5回回すのが標準です。つまり10回くらいは回すことになりますね。


セグメントからテキスト全体へ

このように一つずつすべてのセグメントを完成したら、今度はテキスト全体を通してサイクルを回します。この際は、第2サイクル以降の手順で結構です。テキスト全体と言っても、セグメントごとに完成しているので、苦も無く仕上がってしまうでしょう。

ただし文法・構文があらかた身につき、短文暗唱の目的が表現の獲得に移っている上級者は、このテキスト全体のサイクル回しは徐々に省いていくようになります。文法・構文の全体的な俯瞰図を体得しなければならない初心者・中級者はしっかりテキスト全体のサイクル回しを行ってください。

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以上のプロセスを繰り返しながら、テキスト(あるいはセグメント)の最後に至ったら、頭に戻り同じプロセスを行う。サイクルが深まるごとに、英作文のスムーズさ、瞬間性が増すことを図る。

*セグメントに分割する場合は、セグメントごとにサイクルを回し完成し、最後に教材全体のサイクルトレーニングを行う。

❺ 上達過程での適用

短文暗唱=瞬間英作文で最初に用いる教材は中学文型集の類ですから、中学英語をおおよそ頭で理解した頃がトレーニングのスタートとなります。ですから、ある程度の基礎知識がある人は学習開始から短文暗唱=瞬間英作文を行っていくことになります。しばらくの間、このトレーニングは音読パッケージと並び英語トレーニングの二本柱となります。英語を瞬間的に処理する回路を作るため、即ち「わかること」を「できること」に変えるためにこの2つのトレーニングは絶大な効果を発します。

しかし、私の教室でも音読パッケージは苦にしないのに、短文暗唱=瞬間英作文は敬遠する人が多いのです。その場合、基底能力は高まり、TOEICなどのスコアもあがっていくのですが、英語がすらすらとは口から出てこないという症状を訴えることになります。相手の言っていることはよくわかるのに、英語が自由に操れないためだんまりを決め込まなければならない欲求不満を味わいたくなければ、バランスの取れたトレーニングを行うことをお薦めします。

第1ステージ、第2ステージとこなし、第3ステージに進みしばらくすると英語で言いたいことを言うことにほとんど苦労しなくなります。この時点以降は、短文暗唱=瞬間英作文を続けていくか否かは、学習する個々の人がどれくらいのスピーキング能力を求めているかによります。

一般の人ならトレーニングを止め、実際の会話でスピーキング能力を磨き、維持していけばいいでしょう。教養あるネイティブ・スピーカーの域や同時通訳のようなプロを目指す人はトレーニングを継続しスピーキング能力を常に磨き続ける必要があります。

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