英語を習得するには覚えなければならないことがあります。文法・構文ルールを知らずに英語のセンテンスを作ることはできないし、一定の語彙がなければ話の最中に単語を求めて黙り込むことになり、また英語の読書もかないません。したがって記憶の問題を避けるわけにはいきません。
しかしこの時記憶の仕方というものがあります。学生時代の定期試験用の勉強で行ったようなごりごりした暗記は、外国語を自在に使いこなすことを目的とした学習にはあまり効果がありません。答案用紙に正解を書くことだけを目的として強引な暗記で覚えた知識は、記憶の引き出すのに時間を要し、また試験が終われば大部分がまもなく失われてしまいます。いわゆる「短期記憶」です。
外国語を駆使するためには、必要な知識が深く確実に脳に刻み込まれ、かつ必要な時に瞬時にアクセスし引き出すことができなければなりません。例えば、英単語を目にし、(gaze、え~と、なんだっけ、そうそう「凝視する」だ。Immortal、う~ん「不道徳な」だっけな、いや違うな、え~と、そうだ、「不死の」だ。)という状態では、時間をかけておよその意味を取ればいい英文解釈ならともかく、自然な読みからは程遠いでしょう。
あるいは「あいつの電話番号を知っていれば、電話したのになあ」という内容を英語で言いたい時に、「え~と、過去の事実に反するからif節では、過去完了を使って、帰結節では助動詞の過去形プラスhaveプラス過去分詞だったな」と考えてからでないと英文を組み立てられないレベルではせいぜい穴埋め文法問題や整序作文が解けるだけです。英語を話すということは、上のような内容が頭に浮かんだら、あっという間に頭に刻み込まれた構文ルールが引き出され、If I had known his phone number, I would have called him.という英文がばね仕掛けのように口をついて出てくるということです。