英語を勉強となるとすぐにネイティブ・スピーカーから習おうとする人がいますが、必ずしも得策ではありません。確かに言語を習得するには、非常に若い年齢から、その言語のネイティブ・スピーカーに取り囲まれ、生活の全てをその言語を通じて行うのが最善の方法でしょう。しかし、こうした環境を外国語に関して作ることは容易ではありません。外国語の習得を志す時には、母国語のように吸収するには既にトウが立ちすぎているし、四六時中英語で話し掛けてくれるようにネイティブ・スピーカーを雇うのは大変なコストになり、たいていの人にとって現実的ではないでしょう。
最も一般的なケースは週に1、2回、一回1~2時間のレッスンですが、この程度の言語的刺激だけでは、英語を流暢に操る能力は絶対に身につきません。学習者は、レッスン時間以外にもなんらかの学習、トレーニングを行う必要があります。しかし、ネイティブ・スピーカーは学習者が求める体系的・メソッドを示せないことが多いのです。彼らにとり、英語は自然に習得した言語ですから、「獲得言語」としての英語の学習法については全く分らないのが普通だからです。
また文法や語法についての疑問にもあまり明快な答えは返ってきません。ネイティブ・スピーカーは母国語を文法的に捕らえる習慣を持っていないのでたいていの場合は「とにかく我々はこういうんだ」という説明になりがちです。一度ある英会話のクラスで生徒の一人が、That's the park where I like. と言ったのをネイティブ・スピーカーの教師が Where は使えないと指摘したところ、その生徒は場所に関する関する関係詞は where と習った、park は場所だからいいのではないかと反論しました。教師は「確かに場所ではあるが… 」と説明に窮し生徒を納得させることができませんでしたが、休憩時間に別の生徒が日本語で関係副詞の説明をしていっぺんに問題は解決してしまいました。このように文法は日本語の解説のほうが理解しやすいことも多いものです。